時代劇はおおむね好きだが、積極的に見ようとしないのがいわゆる任侠もの、つまりやくざものである。義理と人情が売りものであるが、その大半はそれを失っている人種の話であって、それは現在のヤクザ映画も同じ。その仁義は親分・子分の世界にのみ生きていて一般人(つまり彼等のいう堅気の衆)には殆ど関わりはないのである。
ひと昔前には私もヤクザにやられたからよく分かっているが、犯罪として立件出来ないようであれば警察も介入はしてくれない。
それはさておき、大ヒットした「木枯し紋次郎」でさへ余り見たいとは思わないし、「次郎長三国志」も又然り。裏長屋の住人の下世話な人情話や武家社会の暖か味や冷たさ、筋の通った「道」としてのきびしさ・やさしさが全くないのであって、只ひたすら親分に対する忠義と縄張り感覚のみが主題であり、今の木っ端役人社会と相通じるものが感じられて仕方ない。